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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

映画館は「人生の学校」コロナで閉じてしまわないでくれ

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 不要不急の自粛どころか、今週は毎日1人で我が映画「無頼」の宣伝キャンペーンで飛び回っていた。大阪のFMラジオの本番で中年DJさんから開口一番「僕は『ガキ帝国』からずっと見てきたんです。これは不良映画の集大成ですなんて言わんといてくれまっか。まだまだ撮ってもらわんと」と。格差社会の底辺や周縁に追いやられてる人々を励まそうと、はみ出し者の映画ばかり撮ってきた自分まで励まされた。

 宣伝キャンペーン行脚すると、街には師走どころか、厳しい現実が押し迫っていた。大阪の天神橋筋商店街も夜になる前からシャッターが下りている店舗が多い。日本中がコロナ前から閉塞している。人々はお互いにお互いを励まし合う時だろう。

 思えば、80年代のキャンペーン行脚はお金もあり豊かだった。冬の札幌や旭川まで行ったこともある。シネコンはなく、風情のある大きな映画館で満員客の無料試写会で舞台挨拶。地方新聞の囲み取材の後、年に200本も映画を見る映画ライターらとネオン街に繰り出し、バターラーメンも堪能し、ついでに宣伝スタッフの車で夜中に網走のホテルまで走って、朝は観光客で賑わう港の朝市で焼きガニを食べ、流氷見物まで出来たバブリーな時代だ。誰もが懸命に仕事をして大いに遊んだ。LINEや携帯がなくても何の不便もなく、時間は穏やかに過ぎた。

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