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荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<73>歩けなくなっても写真は撮れる…街はいろいろなことを教えてくれる

公開日: 更新日:

 オレの写真集、これまでに500冊以上出てるっていうけどね、もっといってるみたいだよ。何年も前に、海外で出版してるのも入れたら、550冊超えてるって言ってたね。写真集がどれぐらい出てるのかって、よく聞かれるけど、何冊なのかわからないんだよね(笑)。

 毎年、誕生日の5月25日に写真集を出しててね、これは『6×7反撃』。なんに反撃すんのかねぇ? ハハハ…。“6×7”っていうのは完全にダジャレなんだよ。このとき67歳で、カメラが6×7で、「反撃」っていうのは、デジタルカメラに対してのことなんじゃないの、きっと(笑)。写真はフィルムだぞ! っていうような、そんな気分だったんじゃないのかねぇ。

銀座四丁目の交差点は…

 この写真、銀座四丁目の交差点なんだけど、丸いのを載せたこういうのが、ぷぁ~って通るんだから。こんなの雇ったって来ないよ。すごいねぇ~。銀座三越の2階から交差点を見てると、おもしろいんだよね。この車椅子の人は、信号をぎりぎりに渡りはじめて、信号が変わっても、まだ渡れなかったんだね。交差点が人で溢れるときとか、突如として交差点が無人になったりとか、そういうのを眺めてると、一日が過ぎちゃう感じだね。

 だから、大丈夫だって言ってたんだよ。歩けなくなったって写真は撮れる、都市は撮れる(笑)。無常観なんかじゃないけど、そういうのって、なんかあるじゃない。街はいろいろなことを教えてくれるっていうかさ。

■興奮しちゃいけない

 たとえば、小津(安二郎)の映画『東京物語』なんか観てると、家屋の無人の様子を長回しっていうか、少し長い時間撮ってるけど、演出なんかしなくたって、あんな光景はしょっちゅうそこらにあるわけよ。銀座四丁目の交差点もそうだけど、渋谷駅前のスクランブル交差点とかさぁ。あんなに大勢の人たちがムチャクチャに歩いてるのに、突如として誰もいない交差点になることがあるの。無の空間になる「時」があるんだよね。そりゃもう、たまんないじゃない。でも、たまんないとかそんなこと言わないで、淡々と撮るけどね。興奮しちゃいけない、ハハハハ…。

(構成=内田真由美)

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