映画「ひまわり」の名匠デ・シーカに悪いことをしたと思っている
“ゴールデンウイーク”はもう70年前に、映画業界の誰かが名付けた和製英語だ。劇場に客を呼んで金を稼ぐ週というわけだ。でも、いつの間にか「最高に素晴らしい連休日」と世間は意味を違えるようになった。
思い返せば、1970年代半ばから邦画の興行は振るわなくなり、連休には大衆が高度経済成長とやらで貯めた金で他のレジャーや旅行に出かける時代になり、変わっていった。73年の正月から74年にかけて、「仁義なき戦い」のシリーズ4作が立て続けに封切られた頃を最後に、満席のオールナイトで客席の通路に週刊誌を尻に敷いて見た映画の記憶はない。映画の中身が詰まった、まさにゴールデンな時代だった。
この何年か、封切りが待ちどおしくなる作品は少なくなった。大人が見たくなるモノが減っている。他にモノがないのか、今の劇場には半世紀前の名匠、ビットリオ・デ・シーカの「ひまわり」に朝から50代、60代の中高年主婦が足を運んでいると聞いた。
イタリア軍の兵士が妻をめとったので戦争が嫌になり、仮病を使って精神病院に入ったらバレてしまい、懲罰でソ連戦線に送られてしまう。戦後、その妻が夫の消息を追ってソ連まで捜しに行く悲しい話だ。ロケ地がウクライナ中部のひまわり畑だったとか。それで今、ロシアの侵略のおかげでにわかに注目され、再上映中というわけだ。