危ない脳梗塞を予防 画期的新薬の「うまみ」と「泣きどころ」
そこで登場したのが、ダビガトランという新規抗凝固剤だ。2011年に、50年ぶりの画期的新薬として申請からわずか10カ月でスピード承認された。
「血液を固める重要な役割をするのがトロンビンという酵素の一種です。ダビガトランは、そのトロンビンの働きを邪魔することで、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐのです。ワーファリンよりも管理がラクなうえ、その効果も心原性脳塞栓症の発症を7割近く減らすワーファリンを上回る成績を挙げることが大規模臨床試験で証明されていたのです」
■リスクを大幅抑制
その後、リバロキサバン、アピキサバンという新薬が相次いで承認された。いずれも、トロンビンより上流に位置する血液凝固因子を阻害する薬で、より強力に血液を固まりにくくする薬だ。
「これらの新薬は脳血管で働く凝固因子をそれほど抑えないので、ワーファリンと違って脳内出血のリスクを大幅に抑制することもわかりました。値段が高いことを別にすれば理想の薬といえなくはありませんが、薬である以上問題はあります。新たな3つの血液凝固抑制剤はワーファリンのように肝臓や腎臓を障害することはありませんが、腎機能が中程度以上悪い人は新薬の血中濃度が高くなって強く効き過ぎる危険性があるのです」