<6>「聴覚と視覚の活性化で認知症予防策になっている」
7月中旬、同施設を訪ねてみた。カラオケは毎週1回。パイプ椅子を並べたホール(写真)で、午後からスタートし、参加者は強制ではなく、いつも30人ぐらいが出席しているという。
職員から車椅子を押されて参加する人。後方の椅子に座り、眠り込んでいる参加者もいた。
進行担当の職員が、
「さて今日、1番で歌う人は山田高子さん(仮名)で~す。歌は『天城越え』」
事前に参加する入居者から、リクエスト曲を聞いているらしい。
指名されてマイクを握る歌い手は、最初から5人までが80歳前後の女性だった。
若い時代、随分と歌ったと思われる歌い慣れた人もいたし、逆に、メロディーと関係なく、声を張り上げている女性もいる。
同老人ホームの世話にボランティアで参加している社会福祉士の香川昇氏が言う。
「認知症が進んでいる入居者も、リクエストのメロディーが流れ、テレビ画面に曲が映った途端に目をカッと開き、しっかり3番まで歌っています。歌い終わると、口をへの字に結んで下を向いています。カラオケはとくに聴覚、視覚の活性化で、認知症予防策になっていますね」