高尿酸値が続く危険は痛風だけではない…その全身病の恐怖

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推定1000万人。いまや国民病

 尿酸値が高い状態が続くと痛風だけでなく、腎障害や高血圧、心疾患や脳血管障害まで引き起こすことが心配されるというからびっくりだ。ビールの飲み過ぎがプリン体の摂り過ぎを招き痛風になるというのは常識だが、なぜ、高尿酸値が腎障害や心疾患、脳血管障害にまでつながるのだろうか。その予防策を調べてみた。

「尿酸は、痛風の原因になることから悪玉のようにいわれていますが、実は、尿酸は血管の一番内側にある内皮細胞の活性酸素を消去して、血管のしなやかさを保つ働きをしていることが知られています。実際、尿酸値の低すぎる人の血管は、しなやかさが障害されていることがわかっているのです」とは鳥取大学大学院医学系研究科の久留一郎教授。

「ただし」と、久留教授は話を続ける。

「実は、尿酸は血液の中に7㎎/㎗までは溶け込むことができるのですが、これを超えると血液に溶け込めなくなってしまい、これが痛風をはじめ様々な病気を引き起こす原因になるのです」

 ちなみに、2018年の統計では、国内に110万人の痛風患者がおり、尿酸値が7㎎/㎗を超える高尿酸血症の人はその約10倍いると推定されているそうだ。

「尿酸は腎臓や血管、脂肪などの臓器の細胞に取り込まれる際に活性酸素を作り出し、これが臓器障害を引き起こすこと考えられています。つまり、高尿酸血症は痛風という局所の障害だけでなく、全身病を引き起こすのです」(久留教授)

 高尿酸血症の人たちを5年間追いかけて調査すると、男女問わず高血圧や慢性腎臓病が起こり、脂質異常症、脂肪肝、糖尿病も発症しやすくなることが明らかになったそうだ。

「高尿酸値が心房細動を引き起こしやすくすることもわかっています。心房細動は心房が震えて心臓のポンプ機能が失われてしまう病気ですが、この心房細動から血栓が脳に行き、脳梗塞につながることもあるのです」(久留教授)

プリン体の多い食品が尿酸値を上げる元凶

 では、尿酸値が高くならないようにするには、どうすればいいのか。内分泌代謝疾患を専門にしている大阪市立大学大学院の藏城雅文先生はこう話す。

「高尿酸値が続く方や痛風があれば薬物治療を行いますが、同時に、生活指導をきちんと行うことが重要です。尿酸値を上げてしまう食品の代表は、アルコールや果糖、それに肉類、魚介類の食べ過ぎです」

 肉類や魚介類をたくさん食べている人は、それほど食べない人に比べて約1.5倍も痛風の発症確率が高くなることがわかっているそうだ。どうして肉類や魚介類をたくさん食べると痛風の発症が増えるのか。

「これらの食べ物には尿酸のもととなるプリン体が多く含まれているからです。プリン体の摂取が過剰になった結果、高尿酸血症や痛風が増えるのです。酒類は、飲む量が増えれば増えるほど、痛風の発症は右肩上がりになります。ただ、プリン体が少ないワインはそれほど痛風の発症は多くなく、プリン体が多く含まれるビールは痛風の発症を多くするようです」

 だが、生きて行く上で肉や魚介類を食べないわけにはいかないし、お酒をやめるのも難しいものがある。他に解決策はないだろうか。

「着目したいのが乳製品です。乳製品をたくさん摂る人は痛風の発症率が半分になったというデータがあり、牛乳やヨーグルトが尿酸値を下げることを疫学的に証明している研究報告がちゃんとあるのです」

乳酸菌PA-3株が尿酸値の上昇を抑制する

 牛乳やヨーグルトには、「カゼイン」というたんぱく質が含まれており、それによって腎臓から尿酸が出て行く効率がよくなり、血液中の尿酸値を下げることができると考えられている。その中で今回注目されたのが、乳酸菌PA-3株という乳酸菌が含まれるヨーグルトだ。

「乳酸菌PA-3株には、食事由来のプリン体を吸収しにくい形に分解することに加えて、乳酸菌が腸管内でプリン体を取り込み、プリン体を栄養源にして生き延びていることが明らかになっています。つまり、プリン体が体内で吸収されるのを抑制してくれるわけです」(藏城先生)

 本当に乳酸菌PA-3株摂取することで、尿酸値が上がりにくくなるのだろうか。

「私たちが実際に臨床研究によって検証した結果、乳酸菌PA-3株を摂取すると食後の血清尿酸値の上昇を有為に抑制することがわかりました。とくに腸管からの尿酸の再吸収を抑制することによって、結果として尿酸値を低い値で抑えることができたのではないかと思っています」

 尿酸値が気になる人は、まずはヨーグルト。そんな習慣を身につけた方がよさそうだ。

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