3カ月で椎間板再生 注射1本でできる「腰痛」の根本的治療
再生医療による腰痛治療の治験が昨年5月からスタートしている。日本で初めての試みであり、腰痛における初の根本的治療でもある。この治療を開発した東海大学医学部整形外科准教授の酒井大輔医師に話を聞いた。
人間の背骨を構成する椎骨と椎骨の間でクッションのような役割を担うのが椎間板だ。これが障害を受けると、腰痛を症状とする椎間板ヘルニア、腰椎変性すべり症、脊柱管狭窄症などさまざまな病気を引き起こす。
「腰痛患者は一説には1000万人ほどいるといわれており、腰痛の相当数が椎間板の障害を起点としています。椎間板の変性が進み、やがてすべったり狭窄したりすると、もう元に戻らず、手術しかなくなる。変性が進みすぎない段階で手を打つべきですが、痛み止めなどの対症療法しかなく、根本的な治療法がありませんでした」
その状況を打破すべく、酒井医師は長年研究を行ってきた。椎間板は血管がない臓器で、ほかから細胞が入ってこないため再生能力に乏しい。それなら元気な細胞を椎間板に移植し、修復・再生に導けばいいのではないか――。酒井医師は2003年に動物実験を開始。10年には人間を対象にした臨床研究を行った。