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神崎浩孝医学博士、薬剤師

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

抗HIV薬の進化で感染者とそうでない人の平均寿命はほぼ同等に

公開日: 更新日:

 ウイルス感染症には、「一過性に感染するもの」と、「一度感染するとウイルス自体が体から出ていくことはなく、免疫力が下がるなどのタイミングで発症するもの」の2種類があります。

 前者はコロナウイルスやインフルエンザウイルスが該当し、後者の代表例としてはヒト免疫不全ウイルス(HIV)が挙げられます。

 HIV感染症(エイズ)は、かつては治療法がなく、いったん発症すると1~2年で死亡してしまう致死的な疾患でした。しかし、治療薬の開発によって患者の生命予後が劇的に改善し、今では「HIV感染者とそうでない人の平均寿命はほぼ同等」という研究結果も報告されているほどです。

 HIVはヒトのT細胞に感染します。T細胞は血中のリンパ球の一種で、免疫機能をつかさどる細胞です。キラーT細胞とヘルパーT細胞の2種類に大別されます。特にヘルパーT細胞は、免疫システムの総司令官的な役割をしています。

 HIVはヘルパーT細胞に寄生し、増殖します。そのためヘルパーT細胞が減少し、免疫システムが働かなくなります。これによって免疫力が低下すると、感染症などさまざまな病気を発症します。これがエイズです。 エイズの発症を抑えるためには、まずウイルスの増殖を抑え、ウイルス量を低く保つことが重要です。1996年以降に開発された抗HIV薬によって、ウイルスの増殖を抑えることができるようになり、エイズを発症する患者が減少しました。エイズに対する社会的な恐怖心がやや和らいだことは、抗HIV薬開発の大きな貢献といえるでしょう。

 次回は抗HIV薬について、その歴史や種類、効果について解説します。

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