痛さやつらさを和らげ生きがいを奪わない在宅医療を選択したい
翌年、地域包括ケアに積極的に取り組む理事長に招かれ、帯広市の北斗病院に赴任する。ここでも地域で安心して看取りが行える“町づくり”に取り組んだ。
在宅医療では、医師よりも訪問看護師の役割が大きい。主体的に緩和ケアを行える訪問看護ステーションの強化も、図らなければならなかった。蘆野さんは、看護師にとって経験がない処置を自ら実践し示すことで、古い常識に覆われた殻を壊し、持てる能力を十分に発揮できるよう、頭の中を解放していった。
「地域ではあまり使われたことのない量のモルヒネを使ったり、お腹にたまったゼリー状の特殊な腹水を在宅で抜いたりしたので、同行した訪問看護師や薬剤師には大変驚かれました」
医療者からすると、在宅では厳しいと思われる症例も少なくなかったという。それでも蘆野さんは、患者が望めば在宅で支援した。看護師たちには、どんなケースでも在宅でやれるということを身をもって教えていったのだ。
「最期は病院じゃないと難しいのではないかというケースがあると思っているのは、患者側も同じです。まずは在宅医療で看取りができる選択肢があることや、病院と在宅では看取りの仕方が違うということを知ってもらえたら、と思います」