介護施設に入ったことで認知症の症状が悪化するケースはある?
認知症の患者さんを施設に預けると「認知症が悪化するのでは?」と悩まれるご家族の声があります。実際、介護施設は認知症の症状を治せる場所ではないのですが、預けたから悪化するわけでもありません。
たしかに生活環境が変わることで人は不安を抱きます。認知症の患者さんでなくても、新しい土地で知らない人たちとの生活が始まれば戸惑ったり、ストレスもたまりますよね。認知症の方は変化に順応するのが厳しくなりますのでなおさらです。
アルツハイマー型認知症の患者さんは、中核症状として、新しいことが覚えられない「記憶障害」や、時間・場所・人が認識できなくなる「見当識障害」が起こります。住み慣れた自宅から施設に入所し、生活習慣や周囲の人間関係が変われば、適応できずに不安や混乱を招き、それによるストレスが認知症の症状の悪化の要因になります。
もちろん、施設に入所しても元気に生活される患者さんはたくさんいます。より良い環境を与えてあげるためにご家族ができることは、「安心」と「刺激」をつくってあげることです。
たとえば施設選びです。自宅から近い施設であれば、家族が面会に通いやすい。コロナ禍で難しい部分はありますが、入所後しばらくは施設にお願いし、週に数回は会話できる機会をつくるといいでしょう。オンラインでも構いません。その際は、お孫さんであったり、近所のお子さんなど、子供との交流がおすすめです。お互い覚えていなくても会話が成り立ち、子供による思いがけない言動は脳に刺激を与えます。さらに近所の施設なら、患者さんが職員の方などと一緒に見慣れた土地を散歩することも可能です。施設に昔の知り合いが入居していることもあるでしょうから、生活圏内で施設を探すのはひとつの方法です。