抗がん剤では80%の患者に脱毛が起こる…見た目の変化が苦痛に
「なんと、すごい美人さんだ」
手術は無事に成功しました。
5年ほど会っていなかった医療従事者のS君に再会した時、その容姿には驚きました。頭の髪だけではなく、眉毛もほとんどなくなっていたのです。「どうしたの? がんの治療でもしたの?」と聞くと、精神的ストレスだといいます。
S君は「がんではないんだけど、ここのところいろんなことがあって……」と話し始めました。親を亡くしたこと、職場環境が大きく変わったこと……話の途中から、S君の目から涙があふれます。それでも、話し終わった頃は「でも最近、少し生えてきたんですよ」と言って、笑顔が見られました。聞けば、皮膚科専門医のところに通院しているといいます。
とても気の毒に思いました。過度なストレスを抱えていることに、最初は本人が気づかなかったようで、たちまち全身に及んだようでした。髪の毛は、その人の容姿を一変させます。
先輩のM医師は、研究に診療にとても優秀な方で、若くして某大学の教授になりました。しかし、それから4年後、彼に会ってびっくりしました。髪の毛がないだけでなく、眉毛は描いたものでした。回復するまでに2年以上はかかったと記憶しています。とても苦労されたと思います。