荒川隆之
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荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【細菌性髄膜炎】ステロイドの使用が推奨されている数少ない感染症

公開日: 更新日:

 ステロイド薬は免疫を抑制するため感染症を悪化させてしまうケースがある……。これまで当連載で何度もお話ししてきました。ただしこれには例外があります。それは重症感染症の時です。

 たとえば新型コロナ感染症では、軽症の場合は抗ウイルス薬での治療が主で、ステロイドを使用するとかえって症状が悪化することが知られています。しかし、中等症Ⅱ以上では肺障害及び多臓器不全をもたらす全身性炎症反応を予防、抑制するため、抗炎症効果を期待してステロイドの使用が推奨されています。

 また「細菌性髄膜炎」は、緊急性の高い重症感染症として知られていますが、こちらもステロイドの使用が推奨されている数少ない感染症です。ステロイドの早期使用により死亡率が下がることがわかっているためです。

 細菌性髄膜炎は、脳を覆っている髄膜で細菌が感染・増殖し炎症を起こすことにより、意識障害や痙攣などの症状が生じる重篤な疾患です。1~2日で症状が急激に悪化し、死亡や重篤な後遺症を残すケースもあり、成人での致死率は20%前後と報告されています。発熱、項部硬直、意識障害を髄膜炎の3徴と呼び、すべての兆候が見られるのは40~50%程度といわれます。

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