中川恵一
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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

早期肺がんは粒子線なら1回照射で治療完了…6月から保険適用

公開日: 更新日:

 肺がんは、早期でも間質性肺炎を合併することがあり、そんな人に従来の放射線で治療すると、間質性肺炎への悪影響から治療後に肺炎が悪化して呼吸不全になるリスクがあります。そのため、間質性肺炎を合併した肺がんでは手術が基本。それでも、放射線で治療する場合は、高齢者など手術が難しいケースです。放射線の呼吸不全リスクは5~7%で、手術に比べて3倍。

 そこでQST病院が従来のX線による1回照射の研究を踏まえて、重粒子線による1回照射を40人に行った結果、呼吸不全は2人で、治療後2年の局所制御率は65.4%。良好な成績が得られ、従来の放射線では難しい間質性肺炎合併例の治療も可能な場合があることが示されています。

 粒子線施設は全国で30ほどと少ないですが、早期肺がんの人は検討の余地があるでしょう。

 保険適用前の粒子線治療にかかる費用は、300万円前後。装置の設置に数十億から100億円の費用がかかり、高い医療費がネックでした。それが保険適用になったことで、医療費の負担額を抑える高額療養費制度を使うことができます。その負担額は、収入と年齢によって異なりますが、標準年収の現役世代なら20万円前後。低所得なら数万円になります。区分によっては、医療費負担が元の金額の1%程度で済むわけです。

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