心不全パンデミックを乗り切るために「薬」と「生活習慣」のバランスを考える
慢性心不全においても、たとえば心室収縮機能を評価するEFが35%未満であれば予後が不良である、といったような専門的な指標がいくつかあるのですが、いずれも血液検査をすればすぐにわかるような数値ではありません。心臓エコーによる数値で評価するにしても、同じ進行度合いでも患者さんによって数値が変わってくるので、評価のターゲットとなるような共通する数値がないのです。
そのため、慢性心不全では個々の臨床像を追わなければならず、いくつかの行動制限や生活制限のようなものが認められて、初めて慢性心不全という病態と判断されます。そのため、慢性心不全予備群といわれる人もたくさんいるのです。
そうした人たちが、薬も飲まず、生活習慣も改めない場合、どのように推移していくのかを調査しようにも、極めて難しいといえます。たとえば、薬を服用するグループと、偽薬を服用するグループを長期にわたって追跡して比較しようとしても、被験者に「病状が悪化して突然死する可能性もある」というリスクを受け入れてもらって調査を実施することはできません。こうしたことから、慢性心不全は治療も緩和ケアも手探り状態といえるのです。