認知症でリスク増…高齢者の転倒予防で重要なポイントは?
厚労省が行った「令和4年人口動態統計」によると、高齢者の転倒・転落・墜落による死亡者数は1万809人と、交通事故の2199人に比べて約5倍に上ると報告されています。
その理由として挙げられるのが、加齢による身体機能の衰えです。年齢を重ねるにつれ筋力や反射神経が低下したり、白内障によって視野が狭まりやすい。とりわけ高齢者は持病の多さから「多剤併用」しているケースが多く、ある研究では5剤以上の薬を飲んでいる人は3~4剤の人に比べて2倍転倒しやすいことが分かっています。中でも睡眠薬や抗不安薬に含まれる成分の「ベンゾジアゼピン」には筋肉を弛緩させる作用があり、転倒の大きな原因になります。
さらに認知症があると、注意力や、空間認知機能が低下しやすい。住み慣れた自宅であっても目の前の段差を見落としたり、モノとの距離感が掴めず、わずかな段差でつまずきます。そこに薬の副作用が加わると、場合によっては階段から足を踏み外して大きなケガにつながるリスクが高くなるのです。
軽度認知障害を患う80代前半の女性は、多少の物忘れはあるものの、日常生活に大きな支障はないと1人暮らしを続けられていました。自宅にお邪魔すると玄関土間と玄関ホールの境目にある「上がり框(かまち)」が高く、ホールの床には衣類やビニール袋などあらゆるモノが散乱。後日、外出から帰宅した際に上がり框につまずいて顔面から転倒して額に大きな傷を負ったと連絡を受けました。