【能登地震現地ルポ】孤立状態にあった限界集落の悲惨すぎる現状…住民全員避難で廃村状態
「地震で湧き水が濁って飲めなくなってしまいました。かろうじて電気は来ているけど、携帯の電波も入らないし、テレビも映らず、使えるのは固定電話だけ。情報が入ってこないから何が起きているのかまったく分からないんです」
11日、日刊ゲンダイ記者が訪れた、石川県七尾市中島町の過疎地域の住民である70代の女性はそう吐露した。同地区は金沢市の中心地から80キロほど北に位置する集落。新聞とラジオ以外に情報を得る手段がなく、県内の被害状況も十分に把握できていない。日刊ゲンダイ記者が珠洲市の被災地で撮影した津波の被害や倒壊した家屋の写真を見せると「これはひどい……」と言葉を失っていた。
さらに奥に位置する岩穴地区は、5日まで孤立状態にあった。集落に通じる一本道が土砂崩れで塞がれ、救援物資も届かなかった。現在でも道路には土砂や倒木が散乱し、車では集落へは入れない。
孤立解消後の人々の様子を取材しに行ったが、なぜか、まったく人がいる気配はない。
集落には、造りの古い家が9棟点在。家に近づくと、人のいない理由がすぐに分かった。どの家屋もダメージが大きく、今にも崩れかねないのだ。屋根が崩壊し、壁は剥がれ、地面が盛り上がって床を押し上げ、とても人が住める状態ではない。震災からたった数日しか経っていないのに、まるで廃虚のような状態だった。家具が散乱し荒れ放題になった家の中には1匹のネズミが動き回っていた。集落はすっかり変わり果ててしまった。