【能登半島地震 現地ルポ】孤立集落の82歳女性漁師の訴え「夫が建ててくれた家に住み続けたい」
「この地域の9割の家が、住める状態ではない。私の家も雨漏りが酷くて、もうダメみたいです」
日刊ゲンダイ記者が石川県珠洲市蛸島町を訪れると、被災した40代女性はこう話した。自宅をリフォームした際のローンも残っており、新しく家を建てる余力はない。
「ここに家を建てても、また地震が起きて倒壊するかも。高3の息子が就職する金沢市内の会社の方から『家族で住める家を探しましょうか』と言ってもらっています。寂しいですが、故郷から移住することを考えています」
県内の孤立集落などでは住民全員を避難させる措置が取られており、多くの住民は「もう故郷へは戻れないだろう」と断腸の思いで避難している。ライフラインの復旧も見通せない故郷に住み続けるか、他の地域に移住するか。被災者たちは重い決断を迫られている。
それでもなお、生まれ育った場所に住み続けたいと願う人は多い。穴水町の麦ケ浦地区は、カキの養殖が盛ん。穏やかな入り江に養殖を生業にする40人ほどが暮らす。小さな集落は一時、孤立状態に陥り、現在でも水道や電気は通っておらず、残ったのは11人ほど。そのうちのひとり、馬道百合子さん(82)は3代続くカキ漁を60年以上続け、「カキを海からあげるのは重いけど、どうにかまだ私の力でもできる。ゆっくりゆっくりとやっている」と今も現役だ。