著者のコラム一覧
岸山真理子ケアマネジャー

1953年静岡県生まれ。大学卒業後、30代まで単純労働の現場を渡り歩く。38歳での出産を機に正規職員の仕事を求め、介護職員に。その後、47歳でケアマネジャーになり、以来20年以上にわたって介護現場の最前線で奮闘する。毎朝のストレッチを欠かさず、真剣に「88歳現役」を見据える。「ケアマネジャーはらはら日記」(三五館シンシャ)がベストセラーに。

「90代の就活」に挑んでいた渡辺さん…その意欲を思い出し、元気づけられた!

公開日: 更新日:

 桂華さんは知り合いのツテでこの町にやって来て、スナックで住み込んで下働きをしていたところ、渡辺さんを紹介されたのだという。

 だが私の危惧とは裏腹に、その後、渡辺夫妻は仲良くハローワークに通い、渡辺さんは産業用ロボットの部品を組み立てる工場やペットボトルの蓋を作る工場で働いた。さらに桂華さんは初めて正規職員として特別養護老人ホームに採用された。調理員になったのである。2人で支え合って共働きをした。

 順風満帆と思えたが、2人を不運が襲う。2019年10月、台風19号で特別養護老人ホームは水没した。桂華さんは毎日、ホームの後片付けに通った。ある夜、帰り道、自転車で田んぼに突っ込んだ。携帯電話で知らせを受けた渡辺さんが桂華さんを助け出した。左肘を骨折していた。そして2020年1月、今度は台湾の弟が病気になり、桂華さんは急きょ、故国に帰ったが、直後のコロナ禍で日本に戻れなくなった。渡辺さんは火の消えたような部屋で桂華さんを待ち続けた。

 2023年1月、桂華さんはようやく帰ってきた。彼女は左肘骨折の手術を受けた病院の厨房で働き始めた。私は6年ぶりに渡辺夫妻に再会した。「桂華さんに負けちゃいられない。仕事を探す」と渡辺さんは意気込んだ。

 90歳をすぎても働く意欲を忘れない渡辺さんを思い出しながら「まだまだ働かなきゃ! あきらめるわけにはいかない」と私は自分を勇気づけていた。

【連載】ケアマネージャー哀愁の日々

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  2. 2

    シニア初心者向け「日帰り登山&温泉」コース5選 「温泉百名山」の著者が楽しみ方を伝授

  3. 3

    斎藤元彦氏猛追の兵庫県知事選はデマと憶測が飛び交う異常な選挙戦…「パワハラは捏造」の陰謀論が急拡散

  4. 4

    兵庫県知事選「頑張れ、斎藤元彦!」続出の異常事態…まさかの再選なら県政はカオス確実

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    別の百条委メンバーも兵庫県知事選中に「脅迫された」…自宅前に県外ナンバーの車、不審人物が何度も行き来、クレーム電話ひっきりなし

  3. 8

    悠仁さまの処遇めぐり保護者間で高まる懸念…筑付高は東大推薦入試で公平性を担保できるのか

  4. 9

    異様な兵庫県知事選の実態…斎藤元彦氏の疑惑「パワハラは捏造」の臆測が急拡散

  5. 10

    「資格確認書」利用で窓口負担増の“ペナルティー”を政府検討 露骨な格差に識者も怒り露わに会員限定記事

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動