70歳からの失敗しない資産運用 ポイントは「増やす」より「減らさない」
儲けられない人の“3有”とは?
経済評論家の杉村富生氏はこう指摘する。
「投資で儲けられない人は“3有”だといわれます。3つの有るですね。すなわち、資産、知識、時間です。この3つを満たす人はリタイア世代に多い。退職金を手にし、社会人としての経験は豊富、そして時間はいくらでもある。定年退職後は要注意。まとまったお金を投資したのはいいが、株式市場は低迷し損失は膨らむ。他人の意見を聞き入れればまだマシですが、自分の経験が邪魔して他人の言うことを聞かない。時間があるのであれこれ余計なことを考えてしまう。その結果の大損です」
反対に儲かる人は“3無”。
資金は少なく、自信がないから他人の意見を聞く。それにバタバタと忙しいので考える時間もない。そんな人が投資で成功するらしい。
「70歳からの投資は“3無”だったころを思い出してスタートしたほうがいい。低リスク商品での運用が基本ですが、少しぐらいは株主優待が充実している銘柄や好配当の会社の株を持ってもいいでしょう」(杉村富生氏)
大切なのは「絶対に投資に回さないお金」を確保しておくこと。
「世帯によって金額は異なりますが、おおむね数百万円程度でしょうか。70歳を過ぎると突然の病気も頭に入れておかなくてはなりません。孫の結婚式、ひ孫のお祝いなどが必要になるかもしれません。家のリフォーム代も確保しておきたいですね」
■金融資産の平均額は1905万円
そうなると資産運用は無理かも……となる70代も出てきそうだが、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(22年)によると、70歳代の金融資産保有額は資産ゼロを含め、平均額は1905万円。中央値は800万円となっている。
「少し余裕のある70代だったら、投資に夢とロマンを求めていいと思います。無理しない範囲で個別銘柄を買ってみるのです。例えば、30代や40代の若き社長が率いるフレッシュな会社に投資する。5年、10年後を見据え、その企業を応援するつもりで株を保有します。個別企業の株を持つと、株主総会に出席することができます。年を取ってくると出無精になりがちですから、外出のきっかけづくりとして投資は有効です。ショッピングセンターに行き、いまどきの若者がどんな商品を買っているのかを眺めるだけで銘柄探しのヒントになりますよ」(杉村富生氏)
資産運用で外出の機会が増え行動範囲が広がれば健康面にもよさそうだ。孫のためにも長生きして、資産を減らさない運用方法を身につけたい。