柔道大家・神永昭夫氏が見抜いた小久保裕紀の“大器の資質”
その試合の前後、小久保からお母さんを紹介された。以前に住友金属の薬局に勤めていて、私のことをよく覚えているという。私は過去の記憶をたどり、薬剤師さんのことを思い出した。その時の小学生が小久保裕紀。15年という時を経て日本代表の仲間になったのだから、奇縁という他ない。
小久保と彼の弟は、女手ひとつで育てられた。和歌山遠征時は代表メンバーの選考中でなおかつ、母親が観戦していたこともあり、小久保は「あの時はとても緊張しました」と明かしている。
その後、4月に日本で台湾との壮行試合を行い、5月にキューバに遠征して親善試合を戦うと、その足で米国のフロリダへ向かった。全日本としては初めて、ドジャース、エクスポズのマイナーチームと3試合を行い、小久保はドジャース戦で本塁打を放った。6月、唯一の大学生として、20人の代表メンバーに選んだ。
■遠目に感じた物凄い迫力
バルセロナ五輪大会期間中、選手村から球場へ移動するためのバスに乗ろうとしていると、かねて懇意にさせてもらっていた柔道の神永昭夫さんから、声をかけられた。