白鵬窮地…照ノ富士と貴景勝に7月場所後横綱同時昇進の目
51年ぶりの奇跡が起きてもおかしくない。
大関照ノ富士(29)が自身4度目の賜杯を抱いた大相撲5月場所。昨年11月場所千秋楽と逆の立場とあって、対戦相手の貴景勝(24)と共に思うところはあったはずだ。
当時は星の差1つで追う照ノ富士が本割で貴景勝を撃破するも、優勝決定戦で土。今回は追われる立場となった照ノ富士が本割で敗れ、再び“延長戦”に持ち込まれた。今場所「16番目」の大一番は互いに警戒してか、はたきの応酬。それでも最後は土俵に追い詰めた照ノ富士がはたき込み、賜杯を手にした。
前回の大関時代には一度もなかった優勝。師匠で審判部長の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も「次の7月場所は綱とり? 当然、そうなる」と話している。
照ノ富士自身も優勝インタビューでは、
「できたらできたでいいんで、できなかったらできなかったでいいんで、最後まで自分の力を(振り)絞りましたと胸張って歩きたいです」
と決意を口にした。
とはいえ、優勝同点の貴景勝も内容次第では昇進の可能性はある。横綱の昇進基準は「2場所連続優勝、あるいはそれに準ずる成績」。あくまで基準であり、原則から外れたケースも多々ある。例えば稀勢の里(現荒磯親方)は昇進直前2場所は優勝次点、優勝。さかのぼれば北勝海(現八角理事長)も優勝、優勝次点。大乃国(現芝田山親方)は2場所連続で優勝次点だった。
横綱の同時昇進も、過去に数例ある。前回は51年前、1970年の北の富士と玉の海。「柏鵬時代」を築いた大鵬と柏戸も、横綱昇進は同じ61年11月場所だ。
照ノ富士は両ヒザのケガに懸念があるとはいえ、横綱候補が出てきたのは間違いない。となると、いよいよ不要論が持ち上がってくるのが横綱白鵬(36)だろう。
封じられた延命策
白鵬は「7月場所で進退を懸ける」という趣旨のコメントを出しており、今場所は休場。もっとも、これまで計算ずくで休場と出場を繰り返し、地位にしがみついてきた横綱だ。今回だって、心変わりしてもおかしくない。再び手術し、「〇月場所で今度こそ進退を……」と、さらに延命しないとは誰も言い切れないだろう。
だが、横綱候補が育ってきているとなれば話は別だ。白鵬は一人横綱で孤軍奮闘してきた功績と優勝44回の実績を加味され、定期的な休場も大目に見られてきた。それもこれも横綱の後継者がいなかったからだ。
照ノ富士と貴景勝のどちらか、あるいはその両方が昇進するようなら、いよいよ白鵬はお払い箱。これ以上の延命はさすがに無理だろう。自力で7月場所の賜杯をもぎ取ればともかく、3月にメスを入れた右ヒザの状態を考えれば15日間を完走できるかどうか。
照ノ富士と貴景勝の躍進で、いよいよ7月場所が白鵬の花道となりそうだ。