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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

遠藤航が口にした「次のW杯が保障されているわけではない」という危機感の先にあるもの

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遠藤航(シュツットガルト・MF/30歳)=後編

「僕は元気君が入ってすごくやりやすい。残留争いする中でも、しっかりボールをつなぎながらチャンスメークするところはチャレンジしている部分。2人で話し合いながらやっています」

 目下、ブンデスリーガ残留争い真っ只中にいる遠藤にとって、1月30日に加入した原口元気の存在は非常に大きい。日本代表でも長く共闘した先輩と両インサイドハーフに入ることによって、攻守両面で確実に迫力を増しているからだ。「デュエル王」の印象が強い遠藤は今、アグレッシブに前へ行けるMFへと進化していく。

 ◇  ◇  ◇

 森保日本では4-2-3-1、3-4-2-1のボランチか、4-3-3のアンカーを務める遠藤。しかしながら、今季のシュツットガルトではインサイドハーフを主戦場としている。

「個人的には6番(ボランチ)をやってないんで、もどかしさを感じる部分もありますけど、とにかく与えられたポジションで結果を出すしかない。

 でも8番(インサイドハーフ)だからこそ、できるプレーもある。前に出ていってゴールに絡む仕事もそうですし、うまく相手の間に入っていけばシュートやアシストにもつなげられる。より運動量も求められるし、自分なりに意欲的にチャレンジしてます」

 本人は今、プレーの幅を広げようと躍起になっているところである。原口と左右に並ぶことでやりやすさは増したという。もともと原口はアタッカー、遠藤はボランチということで、自分は彼をサポートする意識を強めている様子だ。

「元気君とは今、話すことが一番多いし、お互いに成長するためにいろんな意見を出し合ってます。プレーでもうまく関わりながらやれている。すでに彼はチームに欠かせない存在になっていると思います。守備の時は僕がボランチ気味にやって、元気君がトップ下に近い位置に入る感じ。左SBにはクロアチア代表のソサもいますし、左利きのCBの(伊藤)洋輝もいる。関係性はすごくいいし、僕は右でフォローする形になっています」

 遠藤はやや引いた位置から読み、状況判断、守備の出足の鋭さを発揮していこうと試みている。こうした経験値が日本代表でも還元できたら、第2次森保日本もいい方向に進むはず。

 カタールW杯最終予選時の代表は、今のシュツットガルトと同じ4-3-3の布陣を採っていたが、当時の遠藤のポジションはアンカー。彼の前に守田英正(スポルティング・リスボン)と田中碧(デュッセルドルフ)が陣取るというのがベースになっていた。

 だが、今後は遠藤を前に押し出す形もあっていいのではないか。守田や田中碧も所属先で攻撃的な長所を押し出しているため、森保一監督も判断が難しいところだ。が、原口が代表復帰することもあり得るし、別の人材が加わる可能性もある。先々の変化を踏まえながら、遠藤の可能性をより広げていくことも重要なテーマと言える。

「僕も次のW杯が保証されているわけじゃない。期間もすごく長いですし、ロシア(W杯メンバーに選ばれながら)で出られなかった僕がカタールで出たように、一人ひとりの努力で全てが変わる。自分も引き続き、成長していかないといけないと思います」

 常日頃から高い意識を持っている遠藤。彼がもうひとつ目論んでいるのが、守備的MFの価値を向上させることである。

「僕の『デュエル王(ドイツ1部での1対1の勝率トップ)』が少し注目されましたけど、そういうのも自分なりにあえて表に出して、僕のポジションの注目度を上げたいという気持ちは少なからずありました。日本ではどうしてもアタッカーを見ますけど、僕らのような位置の選手も評価してほしいなと。『ネクスト遠藤航』みたいな話が出るようになったのも前向きな方向ですよね。もっともっといい選手が出てきてほしい」 

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