川崎球場のトイレは「戦時中の刑務所便所」…ガラガラのスタンドでは麻雀、焼肉、流しソーメン
1989年から3年間、川崎球場でプレーした。
日曜日だけレフトスタンドの観客が増える。なぜか。球場の三塁側に川崎競輪場があり、レフトスタンドの上段からレースの様子がよく見えたのだ。夕方の最終レースになると、レフトスタンドの観客は、ほぼ全員、野球の試合はそっちのけで後ろを向いていた。「ジャン(打鐘)」が鳴って最終レースが終われば、スタンドはガラガラになる。川崎時代の最後の方はこんなありさまだった。
ロッカールームは湿度が高く、落合博満さんは商売道具のバットを、村田兆治さんは予備のグラブを部屋に入れなかったそうだ。「カビが生えるから」という理由で、自宅に持ち帰ったり、車のトランクに入れている選手が多かった。
球場のトイレは旧式のくみ取り式だった。臭いがひどく、「戦時中の刑務所のトイレ」という設定で映画の撮影が行われたほど。ガラガラのスタンドで試合中に煙がモクモクと立ち込め、「火事だ」と大騒ぎになったと思ったら、観客が七輪を持ち込んで肉を焼いていた。流しソーメンをやっていたとか、4人で麻雀卓を囲んでいたとか、若いカップルが熱いキスを交わしているといった川崎球場のスタンドのシーンが、「プロ野球珍プレー・好プレー」(フジテレビ系)の名物コーナーになった。