「悪の力」姜尚中著
60代半ばにして「悪が人の中に巣くい、病原菌のように人の心を蝕んでいく悪の連鎖」を目の当たりにした著者が、悪とは何か、悪とどう向き合えばよいのかを考察した思索の書。
川崎市中1男子生徒殺害事件や名古屋大女子学生による殺人事件、患者18人が死亡した群馬大病院事件など、世間を震撼させた事件から、聖書や文学作品などに描かれた悪など、さまざまな視点から悪の正体に迫る。一方で、なぜ人間は悪を魅惑的なものとして描くのかと問いを重ね、ネガティブな感情の裏には、芽生えた憎悪のエネルギーを他の人にも共感・理解してもらいたい、人や社会とつながりたいという切なる願いが潜んでいることを明らかにしていく。(集英社 700円+税)