あなたの行動すべてが国や企業に把握されている!
ブルース・シュナイアー著、池村千秋訳「超監視社会」(草思社 2000円+税)では、生活のすべてがネットにつながれる現代において、私たちの個人情報が筒抜けとなっている実態を暴露。コンピューターセキュリティーの権威である著者が、その対抗策も伝授していく。
携帯電話の位置情報を使い、店舗近くにいる利用者を明らかにして広告を送信する。「ジオフェンシング」と呼ばれるテクノロジーが可能にしたマーケティング手法のひとつであり、スターバックスやサブウェイなどの企業が行っている位置情報連動型の広告配信もこれに当たる。一見するとお得な情報が入手できる良いサービスのようだが、自分の位置情報が筒抜けであると考えれば恐ろしいものがある。
このようなテクノロジーは国家でも利用され、位置情報を使ってウクライナ政府が反政府集会の参加者を特定したり、ミシガン州の警察が労働組合の抗議活動予定地近辺にいた人物を洗い出すなど、監視活動が当たり前のように行われている。
自分は悪いことなどしていないから監視されても気にしないという人もいるだろう。しかし、データの半永久的保管が可能になったことで、過去のネット閲覧履歴を証拠に逮捕される時代がくる可能性もある。単なる誇大妄想と片付けてはならない。2012年、フランスのサルコジ大統領が「テロや憎悪や暴力を後押しするようなウェブサイトを日常的に閲覧している人物を見つけ、刑務所に送るようにする」と、公に発言した例もあるのだ。
著者は、パソコンのブラウザーをシャットダウンするたびにクッキーを削除する設定にしているという。監視データが断片的なものとなり、外部からの分析が困難になるためだ。アナログな方法では、スーパーなどの会員カードを友達と交換して使うという。これだけで、店からの行動監視を混乱させることにつながるそうだ。
履歴を残さない検索エンジンを使う、意図的にドライブルートを変更するなど、今日からでもできる監視対抗策も紹介。自分の情報は国や企業にどれだけ握られているのか、危機感を強めるべきだ。