「マリエ」千早茜著
「マリエ」千早茜著
物語は主人公の桐原まりえの離婚から始まる。40歳を目前に夫の森崎から「恋愛がしたい」と切り出され、最終的に承諾。理由には納得いかなかったが、まりえが感じるのは寂しさではなく、すがすがしさだった。
離婚はしたが、まりえにはいくつもの人間関係があり一人ではない。大学時代のサークル仲間や、年上の女友達、馴染みの調香師……。まりえの離婚話を機に彼、彼女らが語る中でさまざまな恋愛観、結婚観に次第にまりえは自分の生き方に迷いが生じる。恋愛しないといけないのか、一人は寂しいのか……。
そんな中、ひょんなことから7歳年下の由井君が、料理を習いに来るようになる。一緒にいて居心地がよい関係が逆に落ち着かなくなり、まりえは結婚相談所に登録。そこで紹介された無口な本田さんと出会う──。
今年、「しろがねの葉」で第168回直木賞を受賞した著者の最新刊。著者と等身大の40代の女性を主人公に据え、大人の恋愛を描いた長編だ。
婚活の場で切実な現実を突きつけられ、条件で選別される理不尽を経験しながら、まりえは自分の幸せとは何かを考えていく。迷いながらも前を向き進んでいこうとする姿に共感する読者は多いだろう。
(文藝春秋 1870円)