目からウロコ 生き物の世界がわかる本特集
「モフモフはなぜ可愛いのか」小林朋道著
「アリとキリギリス」の童話にあるように、アリは働き者の象徴だと思っていたらそうでもないらしい。1日の大半は動かないというアリだっているのだ。身の回りの生き物の意外な生態を紹介しよう。
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「モフモフはなぜ可愛いのか」小林朋道著
ヒトが可愛がってみたくなるものはモフモフしているものが多いが、「モフモフ」には2つの要素がある。
ひとつは「比較的短めの毛がびっしり覆っている状態であること」、もうひとつは「比較的、丸っこくて、小さめであること」。モフモフしていても細くて長ーいものは可愛いと思えないからだ。
これは動物行動学の基本認識にあるように、ヒトの感情や心理、行動、体の構造などの特性は、遺伝子の生存・繁殖に有利になるようにプログラムされていることによる。子どもは保護者に助けてもらわないと生きられないので、親が保護してあげたいと思うように小さく丸っぽいのだ。ヒトはパンダのように、総体的に大きな目、小さな口元、ぎごちない動きなどに可愛さを感じるのである。
ヒトの感情を動物行動学で読み解く。 (新潮社 880円)
「ウマは走る ヒトはコケる」本川達雄著
「ウマは走る ヒトはコケる」本川達雄著
二足歩行する生き物には、ヒトのほかに恐竜とその子孫である鳥がいる。恐竜には太くて長い尾があり、胴と尾を水平にしてその重心のあるあたりから肢を垂直に下ろして立っていたらしい。やじろべえのようにバランスの取れた安定した姿勢である。
一方、ヒトは胴を垂直に立てて立つため、頭が重い不安定な姿勢になった。その不安定さを利用して倒立振り子のように上下動を繰り返しながら省エネの歩き方をしている。それに比べてウマは足の裏の地面に着く部分が少ないため、肢の振れる長さが増して、速く走れるようになったのだ。
動物が動くための、体の驚くべき仕組みを解き明かす。 (中央公論新社 1100円)
「カワセミ都市トーキョー」柳瀬博一著
「カワセミ都市トーキョー」柳瀬博一著
東京の都心部のあちこちで暮らしているのが「清流の宝石」と呼ばれるカワセミだ。高度成長期に公害や家庭排水による水辺の汚染により、エサがなくなったため、いったん姿を消した。ところが、2021年春、カワセミが都心にいることに著者は気づいた。カワセミがいるのは、コンクリで固めた川に水質改善の過程で水産試験場が放流したコイ、外来生物のアメリカザリガニなどがすむ「新しい野生」である。
公園も緑地も、住宅街やオフィスに囲まれている。だが、水質汚染などでいったんゼロリセットされた環境に、クワガタなどがすむ「古い野生」が残っている。カワセミが暮らす「新しい野生」は都市河川の「支流」にあたり、緑の奥に湧水があり、都心でも清らかな水が流れている。
田園調布などの一等地でカワセミが暮らす背景を探る。 (平凡社 1210円)
「働かないアリ 過労死するアリ」村上貴弘著
「働かないアリ 過労死するアリ」村上貴弘著
日本でよく見られるクロヤマアリは日中働いて夜6~7時間眠る。これに対してハキリアリは、キノコを育てて女王アリや幼虫に食べさせ、100万個体ものコロニーを維持するため、24時間働いて15分おきに2、3分寝るだけだ。
ハキリアリと対照的なのはカドフシアリで、1日の大半は動かない。コロニーは50個体程度である。
クロヤマアリの寿命は2~3年だが、働き者のハキリアリの寿命はたったの3カ月。ほとんど動かないカドフシアリは5~6年も生きる。労働時間が長く睡眠時間が短いほど短命なのだ。これはヒトの場合も同じである。
ほかに、100時間以上も水中にいられるオーストラリアのウミトゲアリなど、「アリ語」を研究している「アリ先生」が、世界の驚くべきアリの世界を紹介する。 (扶桑社 1155円)