「さやかの寿司」森沢明夫著
「さやかの寿司」森沢明夫著
作田まひろは風波商店街にある「江戸前 夕凪寿司」に入った。ここはかつて母と来た店だ。母は「今日は、ママが『自由』になったお祝いなの」と、まひろと乾杯した。それは暴力的な夫との「別れ」と「自由」を手に入れる儀式だったのだ。
12年後、母が他界し、納骨を終えたまひろは夕凪寿司にやってきた。威圧的な母との「別れ」と「自由」を受け入れるために。
そのとき、店から出てきた若い女性の目を見て、まひろは硬直した。強い目力が母にそっくりだった。厨房にいた女性が、あいにくランチは終わってしまったが、まかないの海鮮丼ならできると言うと、目力の強い女性が彼女を止めた。
「最高においしい小説」シリーズ3作目。
(角川春樹事務所 1870円)