「火山のふもとで」松家仁之著
「火山のふもとで」松家仁之著
1982年、建築学科を卒業した「ぼく」は、村井俊輔設計事務所に入所する。かねて尊敬する「先生」の建築を自分の目で見て歩くうちに、その仕事の非凡さを肌身で感じ、大学4年の秋、思い余って先生に手紙を書いた。採用の予定はないと言われながらも、先生との面会にこぎつけ、仮採用となったのだ。ほかにも実績のある入所志願者のリストがあったというのに。
村井設計事務所では、夏になると、浅間山のふもとにある「夏の家」に移動し、合宿生活をしながら仕事に取り組むことになっている。この夏、最大の課題は、事務所にとって10年ぶりの指名コンペへの参加となる国立現代図書館の設計案を詰めてゆくことだった。
若き建築家のひと夏の経験を静謐な筆致で描く長編小説。
(新潮社 935円)