「でかしたア!!」談志師匠は植木泥棒の俺をホメてくれた
「おい! 談かん、庭の草が伸びてるなあ、おまえどーせ暇なんだから草むしりしてろ!!」
その日の昼すぎ、師匠にそう言いつけられた俺は相変わらず「う~ん、草刈りが上手にできたら面白い人間になれるって言うんですか」と心の中でその言葉を反芻しモヤモヤしていた。
「いいか、おまえさんが草だと思ったら徹底的に一本残らず抜くんだぞ! サボるなよ!!」という言葉とともに師匠はいつもの書斎の机に向かい、何やら書き物を始めた様子であった……。さー、そこからあれほどまでに奇妙な結末を迎える物語の一日が始まるとはだれが想像したであろう……。
これは「弟子も弟子なら師匠も師匠」という何の教えにもならなければ何の戒めにもならない遠き昭和のまー、どーでもいいと言えばいい物語である。師匠に草むしりを言いつけられた俺はさらにモヤモヤを募らせていた。
「なんで草むしりなんだよ……俺、将来、農業やるわけじゃないのにさ~、あ~面倒くせえなあ~! あ、でも師匠言ってたよなあ……おまえが草だと思ったら抜けって……ウム、てことは俺の判断で草を決めていいってことだよなあ……なーんだ、そーか、俺が決めていーんだ!!じゃ、この腰まである枝が広がった木もグググググ~と抜いちゃうもんねー!!」