ホリエモン“自己啓発本”不発で業界騒然…それでも出版依頼が途切れないワケ
宇宙事業に高級和牛店、パン屋のプロデュース、野球の球団運営と、多岐にわたる事業を展開している、ホリエモンこと、実業家の堀江貴文氏(48)。堀江氏は、書籍の分野でもベストセラー作家として知られている。だが、近ごろ、堀江氏の本がパタリと売れなくなっているという。大手出版社の編集者はこう話す。
「歯に衣着せぬ常識を覆す系の発言が若者を中心に支持を集めていて、堀江さんの自己啓発本は、“信者”と言われる読者にとってバイブル的存在です。書店では新刊コーナーや売れ筋のコーナーなど、必ず『一等地』に陳列され、このジャンルで絶対的な人気を誇っています。『金はあるだけ使え』『家は買うな』『同調圧力なんかクソくらえ』といった歯切れのいい堀江節は、くすぶっている人の心にグサリと刺さり、自分も何かできるのではないかと思わせる麻薬のような陶酔感を与えてくれる自己啓発本の最高峰に位置しています。本を出せばファンが必ず購入する状態が続いていましたが、昨年あたりから堀江さんの本が動かなくなったと業界では話題になっています」
かつて「ゼロ」(2013年)、「多動力 」(2017年)といった書籍は、それぞれ50万部前後の大ベストセラーを記録したが、その勢いがここ1〜2年失速気味で、昨年出版された本は4万部に届かないものがほとんどだという。今年だけで単著で6冊以上、昨年も10冊出ていて、そのほかにマンガ版や共著も出版されるという多作ぶりは変わらない。そろそろネタ切れか、飽きられてきたということなのだろうか。
■見破られた“焼き直し”手法
「堀江さんの場合、ネタ切れということは考えられません。なぜなら同じような話が載っていても、本のタイトルや切り口、カバーイメージを全然違うものに作り変えるため、同じような話が展開されていてもまったく違う本に見えるからです。ただ、最近はその戦略がファンに見破られているフシはあると思います。堀江さんに求められているのは、お金と生き方の話であって、最近、熱心に出している予防医学の本とかは、いくら堀江さんでも求められていないのは売れ行きからも明らかです。ただ、主力のお金の本も、堀江さんの考えが浸透しすぎているせいか以前ほどウケなくなっているようです。そもそもが出し過ぎということなんですが」(前出の編集者)
ホリエモン失速でひろゆきが浮上
その代わりに自己啓発本のジャンルで台頭してきているのが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者で知られるひろゆきこと、西村博之氏(44)。昨年発売された「1%の努力」は30万部を突破。ここ最近は、ピーク時の堀江氏に勝るとも劣らない“ひろゆき本”の出版ラッシュが続き、多くの出版社が順番待ちしている状況だという。
しかし、売れ行きが落ち着いているとはいえ、堀江氏への出版依頼は途切れることがないという。
「最近の出版業界は以前のように10万部以上の本が出づらくなっていて、堀江さんの本は部数が落ちているとはいえコンスタントに3万部前後は売れているからです。堀江さんの場合、本づくりに手間がかからないのも非常にありがたい点です。他の著者の場合、本人に何回か取材をして1冊にまとめますが、堀江さんの本はメルマガや動画、インタビューなど、過去の発言から引っ張ってきて、熟知しているライターがテーマに合わせて膨らませているものも少なくなく、圧倒的に早く作れます。逆に本のためにわざわざ取材の時間をとるのは稀なケースです」(前出の編集者)
出版業界、特に自己啓発本ジャンルで、堀江氏の存在感が薄まることは当分ないという。堀江氏にとって出版は単なる副業の1つに過ぎないのかもしれないが、ファンの期待を裏切るようなインスタントな本づくりを見直す局面に来ているのではないか。