(2)東映を辞めようと…高倉健さんの言葉「ケツまくるときは…」が胸を打った
私はすっかり映画界に幻滅し、退社を覚悟した。
健さんが声をかけてくれたのは数日後だった。
■「千葉、それだけは心に刻んでおけよ」
「おまえ、役者をやめるつもりか」
「はい」
「やめてどうする?」
「何も決めていません」
「男なら中途半端なやめ方をしないで、最後までやったらどうなんだ。本当にもう役者をやる気はないのか」
健さんはまるで私の気持ちを見透かしているようだった。しばらく間を置いて、私は答えた。
「やる気はあります。最後までやりたいです」
「分かった。だったら、今から俺について来い」
そう言って、健さんは私と一緒に社内の各部署を回り、一人一人に深々と頭を下げて謝ってくれたのである。そして、スタジオ内にある健さん専用の部屋に戻った。