映画「生きててよかった」木幡竜さんは中国で俳優に転身 カンパの16万円握りしめ…

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 プロボクサーから2004年に俳優デビューした木幡竜さん。09年公開の中国映画「南京!南京!」の演技が高く評価され、単身中国に渡って約40作に出演。今月13日には日本映画初主演の「生きててよかった」が公開された。中国でのさまざまなエピソードを聞いた。

 実は中国へ行った理由を聞かれても答えられないんですよ。生きていくため、選択肢がなかったというのが正直なところですね(笑)。当時は北京五輪(08年)前で、友人たちには反対されましたよ。「日本で売れてもいないのに、中国に行ってもしょうがないだろう? 中国で稼げんのか」と言われました。

 それでも「南京!南京!」の正式なオファーをいただいたし、このまま日本にいても稼げないから意を決して行くと決めました。すると、僕を応援してくれる友人らがカンパしてくれた。合計16万円。それを握りしめて中国へ行きました。

 中国では日本人の助監督の言われるがままでしたね。お世話になりました。就労ビザの申請に時間がかかるので学生ビザで入国し、北京科技大学に入学しました。その時は1年くらいは16万円で生活ができるかなと高をくくっていました。

 でも、「中国をなめるな」って怒られた。そしたら本当に1、2カ月であっという間に16万円を使い切ってしまった。というのも、大学に日本語を勉強したい若い中国人女性がいて、僕も中国語を勉強しなくてはいけなくて交換語学学習を始めたんです。勉強の後はご飯に行きますよね。その時に「僕が出すね」っていうことが続いてしまって(笑)。

500人の撮影シーンでセリフが出ず…

 中国語の撮影には泣かされましたね。中国ではマンダリンが標準語ですが、民族ごとの言語があるからみんななまっていて、ある意味、それがスタンダードなんです。英語もそう。なので、マンダリンで話さなくても文句は言われないのですが、僕以外のみんなは通じ合っても、僕は彼らが何を言っているかわからない。長いセリフを覚えても、収録の朝に急にセリフ変更なんてこともあるし。

 香港から来たスターが話すのは広東語で、「おまえの中国語は俺よりもいいよ」と広東語とはまったく異なるマンダリンには苦しんでいました。でも、彼らは発音は悪くても話せますからね。今でも忘れられないのは500人ぐらいの撮影シーンでのこと。僕はセリフが出てこなくて、その日の撮影がストップしちゃったんです。現場では誰も助けてくれません。怒られましたね。でも、へこたれずに翌日は忘れたふりしてやりました(笑)。どんな役でも日本人の僕の代わりはいないんだからと腹をくくって。開き直って死に物狂いでやって、その結果がダメだったら仕方ない、と。

 中国はいいなって思ったことがあります。ある時、泊まったホテルの朝食がビュッフェスタイルでした。でも、お粥の入った鍋が3つと茹で卵が置いてあるだけ。僕は日中の撮影中は食事をしないので、普通のホテルの朝食が欲しかったのにお粥だけ……。しかも、味が付いてない。飲み物は紅茶のティーバッグ。つまりお粥を食べながら茹で卵をかじって紅茶で流し込むってわけです(笑)。コンビニなんてないし、仕方がないので毎日同じ朝食を食べていました。

 ところがある日、卵がほんのわずかしょっぱくて、おいしいって感じたんです。素朴だけど豊かだなと思うようになり、撮影がない日でも朝食が食べたくて起きるようになった。それから、ヨシ! ここで頑張ろうと思うことができました。

 今度の映画「生きててよかった」はシリアスな話ではありません。僕は引退したプロボクサーの役ですが、リングの上でしか自分を表現できない不器用な男に、惚れた女房がいて……という夫婦の物語です。一途、一生懸命なヤツってどこか滑稽なんですよ。だから、なんか笑っちゃう映画です。ぜひ、ご覧ください。

▽木幡竜(こはた・りゅう) 1976年9月、神奈川県出身。大橋ボクシングジム所属を経て俳優に転身。中国映画「南京!南京!」に出演。中国で活躍する一方、昨秋にはドラマ「アバランチ」にも出演した。13日には初主演映画「生きててよかった」が公開。

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