著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

水族館劇場「出雲阿國航海記」“まつろわぬ民”を鎮魂する2トンの滝の奔流

公開日: 更新日:

 桃山邑とその一党が目指すものは、既成の権力に対する反乱であり、戦いに斃れた死者への鎮魂でもある。舞台は死と生が交わり、火花を散らす。それは演劇の源流である芸能が本来持つ反権力のエネルギーといえよう。

 クライマックス、沛然と水しぶきを上げる滝の奔流と共に、宙を飛ぶ阿國(千代次)の秘所から無数の蝶が虚空に飛び立つのを観客は幻視する。それは虐げられた人々の魂であり、希望といえる。

 舞台を彩る役者たちが実に魅力的だ。竜神の化身・白雪姫の石井理加の凛とした立ち姿、厄災を招く暗闇天女役の風兄宇内の破天荒、アングラ演劇界の伝説・翠羅臼(山師の金蔵)の型破り芝居、本紙の風俗ライター・伊藤裕作が生臭の修験僧を演じて笑いを取った。ほかに松林彩、七ツ森左門、伊丹宗丞、秋浜立ら。

 病を得た桃山が、余命を発表したことで今公演が「桃山水族館劇場」の最後になるという。いずれ、芝居の登場人物と同じく、追憶の中で新たな生を受けることになるであろう桃山には寺山修司の次の言葉を送りたい。


「時がくると、私の人生にはピリオドが打たれる。だが、父親になれた男の死はピリオドではなく、コンマなのだ。コンマは休止符であり、また次のセンテンスへとひきつがれてゆくことになる」(「墓場まで何マイル?」から)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末