映画で理解するパレスチナ問題(前編)「アラビアのロレンス」は今こそ鑑賞価値がある名作
47年に国連が分割案を採択するとパレスチナは事実上の内戦状態に陥り、48年5月、英国の委任統治終了と同時にイスラエルは独立を宣言する。しかし周辺アラブ諸国はそれを許さずパレスチナに侵攻、第1次中東戦争が始まる。この戦争をパレスチナ人は「ナクバ」(大災害)と呼び、イスラエルは「独立戦争」と呼んだ。
ネタニヤフ首相が言う「独立戦争」とはこのことで、イスラエルにとっては「ホロコースト後に樹立したユダヤ国家の独立と存亡そのもの」を懸けた戦争という意味を持つ。当初劣勢だったイスラエルは反撃に成功し49年の停戦協定で国連分割案を上回る領土を確保するも、ガザ地区はエジプト領、ヨルダン川西岸はヨルダン領で画定する。
今回のハマスによる奇襲は野外音楽フェスでの虐殺と拉致、ロケット弾の大量攻撃など、イスラエル側を激高させる被害をもたらした。その衝撃のあまりの大きさがホロコーストを想起させ「2度目の独立戦争」という発言が生まれたのだろう。それではこのパレスチナ問題をパレスチナ人の視点から見るとどうなるか? =つづく
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▽北島純(きたじま・じゅん) 映画評論家。社会構想大学院大学教授。東京大学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹を兼務。政治映画、北欧映画に詳しい。