おでき、虫歯、水虫…長引く不快症状の犯人は血糖値だった
弘世教授が、世界5大医学雑誌のひとつ「ランセット」の感染症版に掲載した症例は、こういうものだ。
50歳の男性は、39度の高熱で大森病院を受診。原因は、重症の腎盂腎炎(細菌感染から起こる腎盂の炎症)だった。
腎盂腎炎では、炎症の原因のほとんどが大腸菌だ。しかし男性は、非常に珍しいことに黄色ブドウ球菌が原因になっていた。その理由は分からないまま、抗生物質を処方。腎盂腎炎は改善に向かった。この時、ヘモグロビンA1c(=糖尿病の指標。6.2%未満が正常)が14.7%という重症の糖尿病も判明し、その治療も開始された。
1週間後、男性はまた高熱で来院。「実は以前から肩が痛かった」と言うので調べると、肩の筋肉の中に膿がたまっていた。そこには黄色ブドウ球菌があり、最初の高熱は、肩の黄色ブドウ球菌が血液に入って腎臓に至ったことによるものだとわかった。
「男性はそば打ち職人だが、荒れ性で手の傷から黄色ブドウ球菌が入って、肩で感染。膿がたまり、それが腎臓に運ばれ、高熱を引き起こしたのです。その背景には、重症糖尿病があります。健康な人なら、肩に膿がたまり、さらに重症腎盂腎炎に至ったり、ということは決してなかったでしょう」