拡張型心筋症は治療を始めるタイミングが重要
■弁形形成術と心臓再同期療法で食い止める
ただ、これまでの経験から、末期に至る前の段階で適切な治療を受ければ、進行を食い止めることができるケースもあるという印象です。拡張型心筋症の患者さんは、中期で心臓弁膜症の僧帽弁閉鎖不全症が表れ、肺うっ血を起こすことがあります。この段階でまずは僧帽弁の弁形成術を行い、血液の逆流を改善します。
さらに、中期で不整脈=心房細動が表れる患者さんも多いので、心房細動を治療する「メイズ手術」や、近年効果が上がっている「心臓再同期療法」(CRT)を行います。ペースメーカーを使って左右の心室の収縮のタイミング=脈拍のズレを補正し、心臓のポンプ機能を取り戻させる治療です。
心臓の機能は心不全を起こすたびにどんどん落ちていくといわれています。いったん心不全を起こすと心臓の機能が低下してさらに心不全を起こしやすくなり、再び心不全を起こしてさらに機能が低下……という悪循環に陥ってしまうのです。
弁形成術と心臓再同期療法は、その悪循環を食い止めるための治療です。拡張型心筋症そのものを治す方法ではありませんが、その2つの処置を行うだけで、その後は心臓が大きくならずに縮まって、あたかも拡張型心筋症が治ってしまったかのように長生きする患者さんもいます。