「変だ」と思ったら言ってくれる「チェッカー」を持とう!
「私はYさんから『チェッカー』に指名されました」
なんのことかと思ったが、説明を受けて、すばらしいことだと感心した。
知人がいう。知人と85歳になるそのY氏は、編集者と著者の関係。つきあいは40年近くになる。そのY氏が最近、軽度のアルツハイマー型認知症と診断された。
「オレ、認知症になったんだよ」とある日電話で告げられて、知人はどんな言葉を返せばいいのかわからなかった。しかし、Y氏は「長生きすりゃ、半分くらいは認知症になるんだから、オレだけは例外なんて思っていなかった」と妙に明るい。知人の戸惑いをよそに彼はこう続けた。
「オレの言動でなんか変だと思ったら、チェックして遠慮せずに言ってほしい。裸の王様にはなりたくないからね」
以来、知人はこのリクエストを受け入れ、折あるごとに「チェッカー」として「変」を指摘しているという。同時にやや耳が遠くなったY氏に配慮し、会うときは大きな声で話せる広めの喫茶店、あるいは彼のオフィスで会うことにしている。Y氏は知人の指摘に素直に耳を傾け、脳を悩ませ「軌道修正」を心がけているという。