「意思を尊重する」と言いながら既定路線は決まっている?
医者と看護師が帰って兄と私だけになった時、「兄さん、あれで良かったの? 私には『いい治療法があったら探してくれ』と言っていたじゃないか。もう、探さなくていいの?」と尋ねました。すると、兄は「いいんだ。最後はあの医者と看護師に頼むしかないのだから」と答えます。
私は思いました。
病気になった者は立場が弱い。あんなになると負け組なんだ。「あなたにとって最善の方法を」と言われても、「なにかいい治療法はないか……生きたい」と心で思っても、なかなかそんなことは言えない。もし、そんなことを言ったら、きっと「お金持ちでもないのに、あの年寄りがまだ生きたがっている」そう思われるだけなんだ。
「いつでも考えを変えていいです」と言われても、話し合った記録を文書で残すわけだから、これをひっくり返すのはとても大変で、無理ですよ。「この前、『なにもしない』って希望しましたよね。ここに書いてありますよ」と言われるだけだよね。
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2週間後、Aさんはセカンドオピニオンの返事を持って来院されました。