デバイスを使うほど高度な医療を誰もができるようになるが…
しかし、その問題を3択形式にした場合、偏差値の高い人と低い人の解答スピードや正解率は差がなくなっていきます。さらに、偏差値の高い人にはスマホの使用を禁止し、低い人はスマホを使ってネット検索してもOKといった条件を加えれば、偏差値が低い人のほうが正解率がよくなる可能性もあります。つまり、何らかのデバイスを介入させればさせるほど、もともとの偏差値=能力差は小さくなっていくということです。
これは医療も同じです。誰でも簡単に使えるデバイスをいくつも治療に介入させれば、これまでは技術や経験に依存していた高度な医療が、誰にでもできるようになる。そうなれば、患者さんが受ける恩恵は増えるでしょう。しかし、医師の突出した技術や希少な経験に基づいた成功例というものはどんどんなくなっていきます。出題者が「参りました」と脱帽するほどの見事な解答は出てこなくなり、「まあ間違ってはいないから正解だ」という程度の答えばかりになる可能性が高いのです。
カテーテルを使った心臓治療もそうですが、そんなふうに医療も変わってきているといえます。実際、外科医になろうかなと考えている若手が、最終的にカテーテルを使う循環器内科を志望するケースが増えています。一方、外科医はどんどん仕事がなくなっていくため、どうにかしようと外科の領域でカテーテルを活用する治療に取り組む若手が多くなっています。こうした大きな流れを見ると、今後もカテーテルを使った切らない心臓治療が続々と登場するでしょう。いずれにせよ、こうした医療の変化が患者さんにとってプラスになるよう発展させるのが、われわれ医師の務めだと考えます。