著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

マニュアルがないからこそ、患者に合った策を共に学んでいける

公開日: 更新日:

 在宅医療では、最初から決められたマニュアルは存在しません。患者さんの状態はもちろん、患者さんやご家族の性格、考え方、価値観はそれぞれ違います。そんな患者さんやご家族の経験に寄り添いながら、どうすれば患者さんが心地良く過ごせるかを一緒に学んでいくのが在宅医療なのです。

 膵臓がん末期の81歳の男性は1人暮らし。努力家で実直な性格で、これまで電器屋さんとして働いてきた方でした。「今まで何でも一人でやってきた。これからもできることはやりたい。体がつらい時は助けてもらえるとありがたい。この家で最期まで過ごしたい」と私たちに希望を語っていました。

 担当するケアマネジャーさんは在宅看取りの経験がなく、当初は不安がっていたのですが、悩みながらも一緒に学び、在宅医療を開始して約3カ月後に、この患者さんを見送ることとなりました。

 そのケアマネさんが語っていたことが印象に残っています。

「患者さんが『最期はやっぱり病院で』と言った時はどうすればいいのか正直悩みました。でも、先生が話してくださったおかげで、やっぱり家にいたいという言葉を聞けました。きょうだいとは音信不通と聞いていたけど、2日前に弟と妹に連絡していたらしいです。ご本人にとって一番いい形で最期を迎えられたと思います」

 在宅療養を支えるさまざまなスタッフもいろいろな経験を一緒に乗り越えながら成長し、学んでいます。経験を積めば積むほど患者さんに示せる選択肢も増えます。在宅医療は本当に学びが多いのです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    岡田阪神は「老将の大暴走」状態…選手フロントが困惑、“公開処刑”にコーチも委縮

  2. 2

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  3. 3

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  4. 4

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  5. 5

    中日・根尾昂に投打で「限界説」…一軍復帰登板の大炎上で突きつけられた厳しい現実

  1. 6

    安倍派裏金幹部6人「10.27総選挙」の明と暗…候補乱立の野党は“再選”を許してしまうのか

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

  4. 9

    阪神岡田監督は連覇達成でも「解任」だった…背景に《阪神電鉄への人事権「大政奉還」》

  5. 10

    《スチュワート・ジュニアの巻》時間と共に解きほぐれた米ドラフト1巡目のプライド