死ぬときはがんが最適…医師の石蔵文信さん全身がんを語る
長生きがイヤな理由は認知症になって人格崩壊した姿をさらしたくないからです。今はこうして取材を受けても普通の話ができますけれど、そのうちはた迷惑なことを言い出すんです。実際、そういう例をたくさん見てきたからわかるのです。いろんなものがおっくうになって、認知機能も低下して、終活もまともにできなくなりますから。
だから今、僕はどんどん終活しています。物は捨てているし、遺品整理リストも作っています。なにしろ物が多いから、後片付けの負担を軽くしないと家族が大変ですからね。あと、今診ている患者さんの紹介状も書き始めています。
いずれ整理しなければ……と思っていたものが、こういうことになったので積極的に整理できるようになるという意味では、がんは悪いことだけではない。じつは、もう葬式の会葬の品も用意してあります。
5年前に大学教授もやめて、仕事をグッと減らして、今は孫の世話と終活とスポーツで忙しい。一般に骨に転移していると骨がもろいからスポーツはあまりおすすめされないけれど、前立腺がんは骨がもろくならないタイプの転移をするんですよ。日に当たって運動すると骨が丈夫になるから、僕はがん治療をして調子がよくなってきてから趣味のテニスの回数を増やしたんです。