「便秘は命に関わる」が世界の常識 複数の海外研究で証明…15年の追跡調査では20%生存率が低い

公開日: 更新日:

 便秘は、加齢とともに性差に関係なく増え、70歳以上では男女比ほぼ1対1。コロナ禍による活動量低下で、便秘が増えたとの指摘もある。日本初の「慢性便秘症診療ガイドライン」の作成に関わった横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳医師に話を聞いた。

 ◇  ◇  ◇

「日本では、医師ですら『便秘は死ぬ病気ではない』という認識ですが、世界では『命に関わる』という認識です。それを示す研究発表が複数あるのです」

 そのひとつが、米国で15年間生存状況を追跡調査したもの。便秘なし・ありで区別すると、15年後には便秘ありの方が約20%生存率が低かった。

「一番の問題は、排便時のいきみによる急激な血圧上昇です。高齢者は動脈硬化があるため、いきみ時に血管が十分に伸び縮みせず、血圧が一気に上昇する。収縮期血圧(上の血圧)が280㎜Hgまで上昇したというデータもあります。それによって脳卒中や心筋梗塞といった循環器疾患を起こしやすくなるのです」

 排便回数と心血管疾患、脳卒中の死亡リスクを調べた研究では、どちらの疾患も、排便回数が少ないほど死亡リスクが高かった。

 便秘が慢性腎臓病(CKD)の発症率を上げることも明らかになっている。CKDは心血管疾患・脳卒中のリスク因子であり、腎不全による人工透析にもつながる。

「便秘が改善すると腎機能が良くなるとはいわれていたのですが、虎の門病院の住田圭一医師が約350万人の米国人を対象に行った研究で、世界で初めて便秘とCKDが関連していることを突き止めました」

 その研究では、便秘のあり・なし、重症度によって、CKDの発症率ははっきりと異なった。

「考えられる理由として、便秘で電解質異常が生じ、腎機能が低下。一方、CKDによる血流障害、神経障害で、腸管蠕動運動低下などが起こり便秘に至る。便秘とCKDには相互関係があるとみられています」

 健康寿命を延ばすには、便秘を放置していてはいけないのだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動