中川恵一
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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

秋野暢子さんが告白した食道がんで厄介なのは「咽頭との重複」

公開日: 更新日:

 女優の秋野暢子さん(65)が、がんの治療で活動を休止するとの報道がありました。事務所の発表や本人のブログなどによると、頚部食道がんの重複がんで、今週中に治療方針を決めるとのこと。「ポジティブで暢気な性格なので、落ち込むこともなく、闘い抜くための勇気が湧いてきています」と前向きなのは何よりでしょう。

 今回のポイントは、重複がんです。医学的には別々に発生したと考えられるものを重複がんといいます。今回は、同時的に「食道の上下に(ステージ2~3が)3カ所」見つかったようですが、重複が同じ臓器でも、違う臓器でも、発生が別なら重複がんで、さらに発生のタイミングがずれてもそうです。

 これと似ていて全く異なるのが、転移です。たとえば、大腸がんが胃に転移したとします。胃のがんは、大腸がんの細胞が流れて発生したもので別ではありません。これが重複がんとの決定的な違いです。

 この食道がんは、重複しやすい特徴があります。秋野さんのように食道に複数が重複するのが一つ。もう一つは、咽頭や舌など別の部位です。食道がんの2割は、食道以外にもがんができる重複がんといわれています。

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