線維筋痛症の激痛と闘う十文字舞さん「サイレンより大きな声で叫んでいた」

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十文字舞さん(元モデル/36歳)=線維筋痛症

 2019年の年末に「線維筋痛症」と診断されて以来、鎮痛剤を処方されてはいます。ただ、痛みはいつどこに出るか分からない状態が続いています。今年36歳、娘を持つシングルマザーなのに収入はなく、70歳近い両親に養ってもらっている情けない現状です。でも、「このままじゃいけない」と思ってやっと今、少しずつ前を向いて歩き始めたところです。

 最初の異変は2018年ごろ、ゴルフをしていたときのことでした。背中に激痛が走って、帰宅後、しばらく歩けなくなってしまったんです。それで当時パート勤務していた飲食店を解雇され、実家に戻ると、今度は体に強い神経痛のような痛みが場所を変えて出るようになりました。

 整形外科に行ってレントゲンやMRI検査をしても「異常なし」。次に胸が痛くなったので乳腺外科へ行ったけれど、やはり「異常なし」でした。

 その後、アパレルの店員に転職をしたのですが、胸がちぎれるような痛みや、服を持っただけで腕に剣山が刺さったような痛みが走るなどして、お店にご迷惑をかけるばかり……。辞めたくはなかったけれど、疲労も激しく、立っているのもつらくて自分から辞職しました。

 さらなる激痛に襲われたのはその後です。たとえるなら、背中を日本刀で切られたような痛みと、両腕をやけどして皮がベロンとむけたような痛みでした。のたうち回る私を見て、母が救急車を呼んでくれました。でもその救急車の揺れが尋常じゃない痛みを誘発して、サイレンよりも大きな声で叫んでいました。

 運ばれた病院でやっと線維筋痛症の疑いが浮上して、専門医を紹介してもらい、ついに確定診断に至りました。同時に「慢性疲労症候群」との診断も受けました。

 思えば、中学生の頃から移動性の神経痛があり、保健室の常連でした。大人になってもレストランで食事中に突然寝てしまったり、お風呂で寝てしまって鼻までつかりそうになったり……。

 一番衝撃だったのは、居眠り運転でフェンスに突っ込んだことです。ケガは太ももに大きなアザができたくらいで済みましたけれど、車は横転して廃車になりました。でも、自分では居眠りしたという自覚は全然ないのです。普通に起きていたのに気づいたら事故になっていた感覚です。

 線維筋痛症は、慢性的な痛みが体のアチコチに出る病気です。脳から痛みのブレーキ役となるセロトニンという物質が出ないらしく、痛みのアクセルを踏みっぱなしになってしまうそうです。慢性疲労症候群もよく似た病気で、強い疲労が特徴です。病名が付かない間は、自分でもわけが分からないし、周囲からはサボっているように見えてしまってつらさが何重にもなっていた気がします。

■副作用で体重が激増

 病名が付いたら付いたで、今度は薬の副作用に悩まされました。嘔吐とめまい、倦怠感。50キロだった体重が68キロにもなり、モデル体形からかけ離れていくのも精神的につらかったです。しかも、薬を飲んでも飲んでも痛みが消えることはなく、夜も眠れず、痛くて叫んでしまう私の隣で、小さい娘が耳をふさいで寝ている姿を見て、さらに追い込まれました。あまりにも痛くて、こともあろうに母親に「殺してよ」と言ってしまったこともあります。今となっては後悔しかありません。

 その後も、大腸過敏症、日光過敏症、リンパ腺の腫れなど、次々と合併症が出て、その都度対症療法で薬を飲んできました。

 線維筋痛症と分かって一番不便になったのは、それまでかかっていた近所の病院にことごとく受診拒否されたことです。風邪をひいて内科に行っても、線維筋痛症の薬を飲んでいることを言うと、「うちではもう診れません」と言われる始末。歯科医院でも同じでした。痛みで歯を食いしばるせいで、下あごの骨が隆起してあごがちゃんと開かないんです。今は、娘のかかりつけの内科や歯科医院で事情を分かっていただいて、なんとか診てもらえています。

 それでも今のような明るさを取り戻せたのは、どこかで「この病気は『うつ』になりやすい」と読んでからです。うつだけにはなるまいと思ったんですよね。それで私が取り入れたのが「笑いとジョーク」です。それまでは痛みが来ると深刻になるばかりでしたが、今は「やばい、腕とれたわ」とか、「右のおっぱい落としてきちゃったから誰か探してきて~」なんて言って、努めて明るく痛みと付き合うようにしたのです。

 すると、みんなの顔が柔らかくなって、私自身もそれを見て気持ちが少し楽になりました。

 これからは、この病気と「ヘルプマーク」(援助や配慮を必要としていることを示す赤いタグ)を多くの人に知ってもらう活動をしたいと考えています。そのために、モデル復帰が目下の目標。影響力がないと、どんなにSNSで発信しても誰も見てくれませんから(笑)。こんな母を支えてくれる娘のためにも“自慢のママ”でありたいのです。

(聞き手=松永詠美子)

▽十文字舞(じゅうもんじ・まい)1985年、群馬県生まれ。17歳の時、女子高生読者参加型雑誌「Cawaii!」(2009年に休刊)に読者モデルとして登場し、複数のティーン誌で活躍した。社交ダンススタジオを経営する両親の手ほどきでプロダンサーとして活動していた時期もあるが、現在は子育て中のシングルマザー。病気発覚後にヨガインストラクターの資格を取得し、モデル復帰を目指している。

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