整形外科の教科書には「肩凝り」という病名は載っていない
肩凝りは、日本人に頻度が高く、慢性的に悩まされる身体症状ですが、実は整形外科の教科書には「肩凝り」という病名はありません。
日本整形外科学会の報告では、肩凝りを「肩関節部~項部の間、項部、肩甲骨部及び肩甲間部における“固くなった感じ”“張っている感じ”“重苦しい感じ”“痛い感じ”」としています。
つまり肩凝りとは、「肩の凝り」「背中の凝り」「首の凝り」「頭痛」といったさまざまな自覚症状を、単にまとめたものなのです。
19世紀の終わりには、肩凝りという表現は一般的に使われていたようです。明治・大正時代の医師、瀬川昌耆が1896年に出した著書「痃癖(けんぺき)─特殊肩痛」には、「裁縫業に従事すれば肩たちまち凝る、張る、痛むと訴える」とあります。
痃癖の意味は、首から肩にかけて筋肉がひきつること。肩凝りや肩の痛みの総称として使われてきたのでしょう。
また、樋口一葉は「われから」(1896年)で「あるときは婦女どもにこる肩をたたかせて……」とあり、「こる」という言葉を用いています。夏目漱石は「門」(1910年)で、女主人公のお米の肩凝りを「頚と肩の継ぎ目の少し背中によった局部が石のように凝っていた」と著しています。