著者のコラム一覧
新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

今日も「健脳カフェ」は賑やか 学生も入り交じり会話が弾む

公開日: 更新日:

社会的なつながりが良好な人は認知機能低下が緩やか

 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究者は、加齢が認知機能に及ぼす影響を調べた、公表済みの13の研究を統合させ、新たに分析。その結果は、2022年10月20日の「Lancet Healthy Longevity」誌電子版に掲載されました。

 もとになった13の研究は、ブラジル、中国、イギリス、中央アフリカとコンゴ、スウェーデン、ギリシャ、韓国、ドイツ、マレーシア、オーストラリア、アメリカ、プエルトリコ、シンガポールで行われたもの。社会的なつながりの強さと認知症リスクの関係を調べた研究は数多くあるものの、研究者によって指標がさまざまであるため、明確な結論は得られていませんでした。

 今回の分析では、配偶者やパートナーがいる人は、そうでない人と比べて全般的認知機能のスコア低下が遅く、同居人がいる人は、1人暮らしに比べて全体的な認知機能に加え、記憶力や言語能力の低下が遅いことも示唆されました。

 また、家族または友人と週1回交流すること、週1回コミュニティーグループに参加することは、交流やグループへの参加がない場合と比べて記憶力の低下が遅く、孤独を感じずにいることは全般的認知機能の低下や実行機能の低下が遅いと予測。

 男女別の分析では、女性では「配偶者がいる/パートナーがいる」人は、そうでない人より記憶力の低下が遅く、男性にはそうした傾向は見られなかった。

 この研究での最終的な結論はこう。「配偶者・パートナーがいる」「同居人がいる」「週1回コミュニティーグループに参加する」「週1回家族や友人と交流する」「孤独を感じない」といった社会的なつながりが良好な人は、認知機能の低下が緩やかになる可能性がある──。

 軽度認知障害(MCI)や認知症でない人などを対象にした、認知症予防目的の「健脳カフェ」は、まさに社会的なつながりをつくる場。みんなでしゃべって、体を動かして、麻雀やカラオケに興じて……。楽しい時間が認知症予防につながるのです。

 当然ながら、そういった時間を持てる場は、健脳カフェに限りません。見渡せば、あなたのご自宅の近くにも、社会的なつながりを持てる場(麻雀教室やカラオケ教室、市民講座、ボランティアグループなどなど)があるはず。

 合う・合わないがあるでしょうが、まずはそこに足を向けてみてはどうでしょう。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末