森大祐
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森大祐整形外科医

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

「肩の調子があまり良くない」という患者に見られる共通点

公開日: 更新日:

 一般的な肩の脱臼(肩関節脱臼)を放置していたら、いつまでも強い痛みが続き、ときに神経麻痺を起こします。それゆえに、脱臼を整復しなければなりません。

 一方、肩鎖関節の脱臼は、脱臼を起こした直後は痛いものの、次第に痛みは引き、腕も一見、普通に動かせるようになります。そのため、医師も患者も放置しがち。しかし、それは決して勧められるものではありません。

 肩の調子があまり良くないという患者さんを診ると、肩鎖関節脱臼を起こしていた、というケースは珍しくありません。脱臼を起こした時からずいぶん時間が経っているので、患者さんはそのことを忘れているのですが、指摘すると「そういえば、以前……」となります。

 そんな患者さんの共通点として「肩の痛みはそれほど強くない」「しかし頚部から肩にかけて突っ張るような感覚がある」「力が入りにくく、物を上に持ち上げる動作がしづらい」などがあります。一方で、肩の可動域は正常かほぼ正常です。

 私は2017年、JBJS Open Accessという雑誌に肩鎖関節脱臼の10年以上にわたる経過観察の結果を報告しました。それによると、術後も鎖骨がやや脱臼している症例では、痛みが完全に消えずに残っているとのこと。長期経過の論文は、この研究を含めてわずかしかありません。

 では、なぜ肩鎖関節脱臼を、医師も放置したままにするのか。その背景を次回お伝えします。

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