日本温泉科学会会長に聞いた…「温泉」はなぜ「腰痛」にいいのか
「人間の体温は一定に保たれるようにできており、入浴で湯に接している場所の体温が上がると、他の場所にあるまだ温まっていない血液がたくさん送り込まれ熱をもらい、その血液が他の部位に熱を放散することで、温まった場所を冷やします」
これで血流が増加。流れゆく血液で血管内皮が刺激され、血管拡張物質の一酸化窒素が放出される。すると血管が広がり血行がより促進される。
「すると栄養や修復物質の含まれた血液が組織に到達し、組織が再活性化。さらにブラジキニン、トロンボキサンA2といった老廃物や疼痛物質が洗い流され痛みが和らぐのです。水道水の家庭用の風呂でもその効果は得られますが、より体温を上げ、保温効果が長く持続する温泉の方が、効果が高いといえます」
■神経の閾値が上昇し痛みを感じにくくなる
体温上昇は、痛みに対する閾値も上げる。腰痛のような重く、じわーっとした痛みは、痛みを感じる神経のうち、C線維という細い神経が関係している。前田医師は、どれくらいの電流の強さで痛みを感じるかを調べる電流知覚閾値計を用い、湯温41度15分の全身入浴の前後の変化を調べた。