認知症介護を円滑にさせる「ユマニチュード」とは?
介護者の負担を軽減させ、介護を円滑にさせられる
「話す」とは、優しいトーンで語りかけを行い、相手との間に言葉をあふれさせることです。食事や着替えの介助をしていると、つい夢中になって無言で行っている人も少なくありません。ですが、本人からすれば、“物”として扱われているように感じやすく、自尊心が失われやすくなってしまいます。介護する際は、今何を行っているか言葉にし、言葉かけを行うとよいといわれています。その際、相手から返答がなくても常に話しかけ続け、自分の存在が認められていると感じてもらえることが重要です。
以前、ある看護師から担当する認知症の患者さんの対応で困っていると相談を受けました。治療がまだ必要で、入院の継続が必要な方でした。自宅に帰りたいと繰り返し訴えて、病院の中で出口を探して歩き回っていました。家に帰りたい理由や、その方が表現している思いを否定せずに聞きながら一緒に納得される方法を提案したところ、気持ちが落ち着いて病院内でとどまれるようになりました。
このように、ユマニチュードは患者さんだけでなく、介護者の負担を軽減させ、介護を円滑にさせられるのです。次回は「触れる」「立つ」についてお話しします。(つづく)
▽濵優理(はま・ゆり) 山梨県立看護短期大学卒業、1998年山梨医科大学付属病院勤務、2000年島田市民病院勤務を経て、05年から現在の諏訪赤十字病院勤務。